毎月更新!時事コラム

第1713号(9月25号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「高すぎる所得を調整する」(8月30日、中国の習近平国家主席)――中国共産党の会議で。大企業や高所得層に対して社会貢献を促す方針を示し、「党の指導に従うよう各企業に求める」と明言した。富の再分配を意味する「共同富裕」のスローガンを掲げて経済格差是正をめざす構造改革を推し進めており、すでにネットサービス大手・テンセントの創業者である馬化騰氏は当局の寄付金プロジェクトに500億元(約8千億円)を寄付すると発表した。今後はさらに同国内の富裕層に対する締め付けが厳しくなると予想されており、中国系企業のみならず、消費低迷を警戒して「ルイ・ヴィトン」をはじめとした高級ブランド企業や「ポルシェ」などの高級車メーカーも株価を落とすなど影響は国内外に波及している。

◆「五輪の赤字は2.4兆円」(8月26日、宮本勝浩関西大学名誉教授)――研究発表で。東京オリンピック・パラリンピック開催による収支の試算結果について「赤字の総額は約2兆3713億円となりました」と報告した。赤字の内訳は都が1兆4077億円、国が8736億円、組織委員会が900億円となっており、当事者間の今後の協議次第では契約上の責任者である東京都が組織委の赤字分を補てんすることになる可能性もある。なお現時点で公表されていないコロナ対策費や2019年以降の国の五輪関係経費は試算に含まれていないことから、実際の赤字額はさらに膨らむとみられる。

◆「消費増税はしない」(9月4日、自民党の岸田文雄前政調会長)――テレビ番組で。自民党総裁選の選挙公約として掲げる経済対策の財源について「消費税にさわることは考えていない」と説明し、消費増税の可能性を否定した。「必要とされるものに思い切って財政出動する必要がある」と主張しており、事業者向けの持続化給付金や家賃支援給付金の再支給など数十兆円規模の経済対策を見込む。財源には国債を充てるという。岸田氏は自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に向けて最初に出馬を表明し、「国民に納得感のある説明をし、先手先手で対応する」と語った。コロナ対策が「後手後手」と批判を浴びてきた現政権との違いをアピールする狙いがあると見られる。なお、コロナ禍の経済対策としての消費減税は考えていないという。

気になるニュースのキーワード

圧縮記帳

 圧縮記帳は、国の補助金などを受け取った事業年度の課税額を、翌年以降に繰り延べることのできる会計処理だ。補助金の受け取りにより発生する収益に対し、不動産などの固定資産の取得費用を相殺することで、その年の税額を圧縮する。
 圧縮記帳を用いない通常の会計処理では、補助金を受け取った年度の税額が膨らんでしまう。例えば機械設備を購入するために補助金を受け取ったとすると、補助金収入は法人税上の益金になるため、受け取った補助金に対して税金が課される。一方で損金にできる機械設備の購入費用は原則として法定耐用年数で分割して計上することになるため、初年度に一括して損金にすることはできない。よって相対的にみると課税額が大きくなり、補助金を利用するときには税金で支払う分を残すことを考慮する必要が生じる。
 こうした一般的な会計処理では補助金の趣旨が果たされないことから、圧縮記帳という特殊な会計処理が導入されている。圧縮記帳の適用対象となる収入は法人税法と租税特別措置法で明示されており、国庫補助金のほか、被災時に受け取る保険金や行政機関による換地処分を受ける場合などが対象になる。
 なお、圧縮記帳を適用すると翌年以降の減価償却費が減少するため、トータルで支払う税額はかわらない。あくまで課税を繰り延べるにすぎない点には注意が必要だ。

押さえておきたいIT用語

【新連載】押さえておきたいIT用語「ランサムウェア」

 ランサムウェアはコンピュータウイルスの一種で、企業から盗み出した機密情報と引き換えに金銭を要求することから「身代金要求型ウイルス」と呼ばれる。Ransom(身代金)とSoftware(ソフトウェア)が語源となっている。
 自社のパソコンがランサムウェアに感染すると、保存しているデータが暗号化により操作不能になり、金銭を要求する画面が表示される。感染した端末を経由して他の端末や記録媒体のデータが使用できなくなることもある。
 送られてきたメールの添付ファイルを開いたり、本文中に記載されたリンク先をクリックしたりするのが主な感染経路だ。改ざんされたウェブサイトにアクセスしただけでウイルスに感染することもある。
 2021年度版の警察白書は、前年のサイバー犯罪の摘発件数が9875件と過去最多を更新し、なかでもランサムウェアの被害が深刻化したと報告している。同年にはゲーム大手のカプコンが被害に遭い、1テラバイトに及ぶ個人情報が盗まれ、流出させないことと引き換えに11.5億円を要求された。同社が警察など関係機関に相談のうえで〝身代金〟の要求に応じなかったところ、今年4月までに1万5649人分の個人情報が流出してしまった。
 今年6月には富士フイルムも被害にあっている。大企業に侵入するための足掛かりとして中小企業が狙われるケースもある。

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