毎月更新!時事コラム

第1714号(10月5号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「市外での棋士との対局はふるさと納税の返礼品にならない」(9月15日、総務省)――大阪府高槻市の発表で。同市がふるさと納税の返礼品の目玉としていた渡辺明三冠ら「トップ将棋棋士と対局できる権利」について、総務省から「返礼品の基準に反する」と指摘を受けて取り下げていたことが分かった。同市は市内に移転してくる関西将棋会館の建設費を支援するため、ふるさと納税型のクラウドファンディングで寄付を募っている。対局権は300万円の寄付者に対する返礼品で、対局場所には数々の名勝負を生み出してきた現会館(大阪市福島区)の「御上段の間」を使用する予定だった。しかし市外で対局することが国から問題視され、返礼品の認定基準「(自治体の)区域内で提供される役務」に反すると指摘を受けた。9月6日に新規募集を停止し、すでに寄付していた1人については市内に会場を変更して調整するという。

◆「酒税を増やせばがん患者を減らせる」(9月20日、WHO欧州事務所)――税制改正を促す声明で。がんによる死者を減らすための方策として酒税の増税を提案し、「酒税を2倍にすればがん患者を年間1万700人、死者を4850人減らすことができる」と主張した。世界保健機関(WHO)によると、飲酒は肝臓や口腔などさまざまな部位でがんを発症する原因になるという。欧州事務所は欧州で毎年18万人が飲酒を原因とするがんに罹患し、さらに8万5千人が死亡に至っているとの試算を発表したうえで、「酒税を増税することががん患者を減らすための最善策のひとつだ」と訴えた。

◆「企業の6割がインボイス制度を理解していない」(9月24日、株式会社インフォマート)――アンケート結果の公表で。電子商取引のプラットフォームを運営する同社がユーザー企業を対象にインボイス(適格請求書)制度への対応状況を調査したところ、9割近くが未対応で、さらに55.3%の企業が「インボイス制度についてよくわからない」と回答したという。インボイスは適切な税率や消費税などを記載した請求書のこと。2023年10月から制度化され、消費税の仕入税額控除を受けるためにはインボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」と取引することが必須条件となる。発行事業者の登録受付は10月に始まった。

気になるニュースのキーワード

TPP

 環太平洋パートナーシップ(TPP)は、アジア太平洋地域の経済連携協定のひとつだ。関税の撤廃や統一的な取引ルール策定などにより自由貿易や国家間の投資を促すことを目的としている。日本やオーストラリア、シンガポールなど11カ国が参加しており、参加国の国内総生産(GDP)は10兆ドルを超えて世界全体の約1割を占める規模になっている。
 TPPでは自由貿易を促進するため、工業製品の99%で関税を撤廃している。さらにTPPの加盟国内で一定以上の製品を生産すれば関税ゼロで輸出できる「原産地規制」の制度が整備されており、人件費の安い国で原料の調達・製造をすれば関税が免除されるようになっている。また、関税の撤廃にとどまらず幅広い分野でルールを策定していることが特色として挙げられる。具体的には知的財産や労働問題、電子商取引など21の分野を取り扱う。
 TPP参加国のメリットとして、加盟国への輸出が容易になることで経済が活性化することが見込まれる。反面、デメリットとしては国外の安価な商品が輸入されることによりデフレが引き起こされたり、国内産業が脅かされたりするリスクがある。
 主権をめぐり対立関係にある中国と台湾が相次いでTPPへの加盟申請を出し、交渉を行っている。議長国である日本の対応が注目を浴びている。

押さえておきたいIT用語

サイバー局

 サイバー局とは、深刻化しているサイバー犯罪に特化して取り締まる警察庁の組織だ。警察庁は2022年度の発足を予定している。
 デジタル化が進むなかでサイバー攻撃の脅威は増している。サイバー攻撃に関係するとみられる不審アクセスは1日あたり6506件(20年度)に上り、さらに4月には中国人民解放軍が擁する技術者集団がJAXA(宇宙航空研究開発機構)など日本国内の200に上る企業や研究機関に対して大規模なサイバー攻撃を行っていたことが発覚した。サイバー攻撃ではセキュリティの甘い中小企業が攻撃の糸口として利用されるケースもあるという。
 巧妙化するサイバー事案への対応を強化するため、あらゆる案件を一元的に管理する組織としてサイバー局を設立する。現状は不正送金などのサイバー犯罪は生活安全局が、政府機関や企業を対象としたサイバーテロは警備局が担当するなど、担当局が分散している。これらの機能をサイバー局に集約することで、情報収集や対策を効率的に行えるようにする。
 約200人の警察官で構成する「サイバー直轄隊」も発足する。直轄隊はサイバー局が指揮監督する部隊で、警察庁自らが捜査を行う。都道府県警だけでは対応が難しい特に重大な事案で捜査にあたる。
 警察庁の松本光弘長官は「昨今のサイバー攻撃は国家を背景にしたものなど極めて深刻だ」と警戒を強めている。

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