毎月更新!時事コラム

第1716号(10月25号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「賃上げすれば評価して税優遇する」(10月11日、岸田文雄首相)――テレビ番組で。首相就任後、継続して必要性を訴えてきた賃上げ税制の強化について、現行制度の減税額では不十分だと指摘し「もっと思い切ってやらなければならない。賃金を上げたのを評価して税優遇を適用する」と述べた。賃上げを促す税制はこれまでも導入されてきたが、従来は一時金の積み増しでも適用されたことから賃金そのものの底上げに繋がらなかったとみられており、首相は「一人ひとりの賃金の引き上げが重要だ」と訴えた。首相が賃上げにこだわる背景には企業の内部留保を従業員に還元させる狙いがある。財務省によれば21年3月末時点の企業の内部留保の残高は約484兆円に上っており、9年連続で過去最高を更新中だ。

◆「企業間のポイント交換は非課税」(10月14日、大阪高裁の西川知一郎裁判長)――判決で。サービスの割引などを目的に企業が発行したポイントについて、利用者が別の企業の発行するポイントに交換する際に企業間で発生するポイント相当額の支払いが消費税の課税対象に当たるとする国の主張を退け、「無償取引に該当し課税対象にならない」との判決を下した。原告は料金割引のポイント制度を導入している大阪市内の交通系ICカードの運営事業者で、提携法人のポイントを交換して利用することも可能としている。利用者が交換申請したら提携法人が同社に対しポイント相当額を支払う仕組みだ。国はこの支払いが「ポイント付与という役務の提供を条件とする対価だ」として課税対象になると主張していたが、西川裁判長は「(手数料などの報酬が発生しないことから)ポイント還元の原資にすぎない」と退けた。国は上告せず判決が確定した。

気になるニュースのキーワード

生前贈与加算

 生前贈与加算とは、被相続人の死亡前3年間に相続人が受贈した資産について、相続税の計算に含める制度だ。年間110万円の基礎控除(暦年課税制度)があることから生前贈与が相続税対策として活用されているが、生前贈与加算により死亡前3年分は基礎控除枠内の贈与であっても非課税とならず、相続税が課されることとなる。基礎控除枠を超える贈与によりすでに相続人が贈与税を支払っていた場合には、贈与税額を相続税額から差し引いて計算する。
 ただし、子どもの配偶者や孫といった相続人以外への贈与であれば、被相続人の死亡から3年以内でも原則として生前贈与加算の対象外となる。
 また被相続人の死亡前3年間の贈与であっても、①贈与税の配偶者控除、②住宅取得等資金の非課税額、③教育資金の一括贈与の非課税額、④結婚や子育て資金の贈与の非課税額―であれば生前贈与加算の対象外となる。
 相続税や贈与税の計算方法をめぐり、与党税制調査会が昨年12月に「格差固定防止のため(中略)暦年課税制度のあり方を見直す」と発表したことから、生前贈与加算の対象となる年数が延長されるとの懸念が高まっている。

押さえておきたいIT用語

サイバー保険

 サイバー保険とは、サイバー攻撃や情報漏えいといった情報セキュリティ上のトラブルにより発生した費用や損害の補償を受けることができる損害保険だ。主な補償対象としては、サイバー攻撃によるシステム障害で調査・復旧に要する対応費用や、ネットワーク機器が停止し営業不可能となった期間の利益の補償、情報漏えいで発生した第三者への損害賠償費用の補てんなどが挙げられる。
 日本損害保険協会の調査によると、中小企業の19.8%が直近の半年以内にサイバー被害を受けたことがあるという。被害によって生じた不利益として最も多いのが「事故対応費用」(43.1%)だ。事故対応費用が発生した中小企業の約7割では被害総額が50万円未満にとどまっているものの、500万円以上1千万円未満も6.3%あり、さらに1千万円以上1億円未満も3.2%あるなど多額の被害に遭うケースもみられた。
 デジタル化で先行する米国でサイバー保険の加入率は47%に達している一方、日本は7%ほどにとどまっている。

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