毎月更新!時事コラム

第1763号(2月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「最低税率の導入で世界の法人税収は28兆円増える」(1月18日、OECD)――公表資料で。経済協力開発機構(OECD)が主導した法人税の最低税率ルールの導入により、「世界で年間2200億ドル(約28兆5千億円)の税収増に繋がる」との試算結果を公表した。法人税を巡っては長年にわたり、各国がグローバル企業や富裕層の誘致を目的に税率の引き下げを行う、いわゆる「底辺への競争」が問題視されてきた。19年に始まった新型コロナウイルスの経済対策により各国の財政が急激に厳しくなったことで世界共通のルール整備が一挙に進み、21年には130超の国・地域が最低税率を15%に統一する新ルールに合意した。現在は各国内で法整備が進められており、日本では24年にも新ルールが施行される見通しだ。

◆「過去最高の税収を生かし、子育て支援をはじめとしたワイズスペンディング(賢い支出)を進めていく」(1月27日、東京都の小池百合子知事)――予算案の説明会で。過去最大となる都税収入6兆2000億円を織り込んだ2023年度当初予算案を発表し、「将来に向けた街づくりをしっかり進めるためにワイズスペンディングしていきたい」と語った。重点施策として位置づけている子育て支援策については、18歳以下を対象とする給付金の新設や第2子の保育費を無償化する取り組みなどに過去最大となる総額1兆6000億円を盛り込んだ。

◆「子どもの数に応じて税負担を減らすべき」(1月30日、自民党の茂木敏充幹事長)――テレビ番組で。子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式」を導入すべきと主張し、「とてもインパクトのある仕組みといえる。少子化問題に対する私なりの集大成となる提案だ」と強調した。N分N乗方式は少子化対策を進めるフランスが採用している税制で、一家の総所得を家族の人数で割ってから所得税額を計算する仕組み。茂木氏は「子どもの数が多ければ多いほど効果的な制度であり、少子化対策に寄与するだろう」と主張した。ただN分N乗方式については、共働き世帯と比較して片働き世帯のほうが有利になることや、高所得者ほど恩恵が大きくなる点などに批判の声も上がっており、岸田文雄首相は「さまざまな課題がある」と慎重な姿勢を示している。

気になるニュースのキーワード

児童手当

 児童手当とは、子育てにかかる費用負担の軽減を目的として、中学生以下の子どもを育てている保護者に現金を給付する制度のこと。政府は2月2日、一部の高収入世帯について支給額を減らす「所得制限」を撤廃する方向で調整に入った。
 児童手当の支給額は子どもの年齢によって変わる。0~2歳は月額1万5000円で、3歳から中学生は1万円となっている。第3子以降は優遇されており、3歳から小学生にかけて1万5000円まで増額される。
 一部の高収入世帯は支給額が減額される所得制限の対象となる。年収960万円以上だと支給額は一律5000円減少する。また、年収がおおむね1200万円以上だと手当そのものがなくなる。
 児童手当は1972年に導入されて以降、支給額や所得制限を巡って制度改正が繰り返されてきた。2009年に政権を奪取した旧民主党は所得制限を一時的に撤廃したものの、財源難を理由として12年には所得制限を復活させた。昨年10月には岸田政権が所得制限を拡充し、年収が一定額を超えている世帯を支給対象から外した。
 なお児童手当による収入は、社会的に必要とされる支援にあたるとして、児童手当法の規定により非課税とされている。同様の理由で非課税となっているものとしては、健康保険の保険給付や雇用保険の失業給付などがある。

押さえておきたいIT用語

SaaS(サース、サーズ)

 SaaSとは、Software as a Serviceの略語で、ITベンダーが提供しているソフトウエアの機能をインターネット経由で利用できるサービスのことを指す。具体例としては、オンラインで文書の作成・編集が行える「Googleドキュメント」や、ビジネス用チャットサービスの「Chatwork」、インターネット上でデータの保存・管理が行える「Dropbox」などがある。「弥生会計オンライン」「マネーフォワードクラウド会計」といったオンラインで利用できる会計ソフトもSaaSの一種だ。
 SaaSのメリットとしては、①インターネット環境さえあればアクセスできる、②複数のユーザーが同時にデータの管理・編集を行える、③ソフト開発やアップデートなどの管理コストが不要――などがある。
 SaaSを利用するうえでの注意点としては、インターネットの接続状況次第でサービスが利用できなくなるリスクが挙げられる。また、ベンダー都合の障害やメンテナンスにより一時的に利用停止されることもある。
 SaaSの市場は年々拡大している。IT専門の市場調査会社アイ・ティ・アールによると、2018年度以降の市場規模は働き方改革や業務効率化のニーズを受けて前年度比120~130%のペースで伸び続けており、22年度は690億円に達する見通しだ。従来型の自社運用向けソフトウエアの市場規模790億円に迫る勢いとなっている。

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