毎月更新!時事コラム

第1764号(2月25号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「インボイス制度はもはやデスゲーム」(2月13日、インボイス制度を考えるフリーランスの会・小泉なつみ代表)――記者会見で。10月からスタートする消費税のインボイス制度について、「新たに生じる消費税負担を民間で押し付け合う〝デスゲーム〟だ」と指摘した。インボイス制度が始まると、年収1千万円以下の免税事業者への発注分については消費税の仕入税額控除ができなくなり、新たな負担を発注者か受注者のいずれかが負う必要が生じる。2023年度税制改正では納税額を売上税額の2割まで軽減する時限措置が盛り込まれたものの、小泉氏は「たった3年間の措置でその場しのぎでしかなく、根本的な解決に至っていない」と訴えた。同団体はインボイス制度の導入に反対する署名を約18万筆集め、財務省に提出した。

◆「増税不安が広がっている原因は、首相の説明不足にある」(2月9日、自民党の西田昌司参院議員)――週刊誌のインタビューで。防衛費拡充に向けた増税の決定に国民や経済団体から批判が上がっていることについて、「〝防衛増税〟という言葉がひとり歩きして必要以上に不安を煽っているのが原因だろう。岸田首相は国民に詳しく説明すべき」との見解を示した。政府はウクライナ情勢や台湾有事を念頭に防衛力の抜本的強化を掲げており、不足している年間1兆円超の財源は法人税・所得税・たばこ税の増税で賄うとしている。西田氏は「例えば法人増税の対象となるのは主に大企業で、ほとんどの中小企業に影響はない。防衛増税の中身についてもっと国民に知ってもらう必要がある」と主張した。

◆「税や社会保険の『年収の壁』を解消する」(2月1日、岸田文雄首相)――衆院予算委員会で。所得が一定水準を超えると扶養から外れて税・社会保険料の負担が生じる、いわゆる「年収の壁」について、「就労抑制の一因になっている。制度の見直しに向け幅広く対応策を検討する」と述べた。勤務先の企業規模に応じ年収が106万円や130万円を超えると扶養から外れてしまうため、パートやアルバイトなどの非正規雇用者は〝働き損〟を避ける目的で就労時間を短くする傾向がある。首相は「非正規雇用の労働者も本人の希望に応じて活躍できるよう制度を見直したい」との方針を語った。

気になるニュースのキーワード

N分N乗方式

 N分N乗方式とは、一家の総所得を家族の人数で割ってから所得税額を算出する税制のこと。子どもの数が多ければ多いほど課税額が減少するため少子化対策に有効な制度とされており、実際に出生率の高いフランスで導入されている。少子化が進む日本でも導入を求める声が上がっており、1月の国会代表質問で自民党の茂木敏充幹事長が「画期的な税制」と紹介したことをきっかけに議論が加速した。
 具体的な計算手順としては、①家族の所得を家族構成に応じて決める除数「N」で割って一人当たりの所得を算出する、②一人当たりの所得に税率を掛けてそれぞれの税額を算出する、③それぞれの税額をN倍して世帯の税額を算出する―となっている。世帯の人数が多いほどより低い税率が適用されるため、子どもをもうけるインセンティブになるとされている。
 ただ、共働き世帯と比較して片働き世帯のほうが有利になるためN分N乗方式の導入には批判の声もある。また、高所得者ほど恩恵が大きくなる一方、所得が低いほどメリットが少なくなるという特徴もある。岸田文雄首相も「導入にはさまざまな課題がある」と慎重姿勢をとっている。
 財務省の試算によると、N分N乗方式を導入すると4兆円から5兆円の税収減となる。減収分を補てんするには消費税を約2%引き上げる必要があるという規定により非課税とされている。同様の理由で非課税となっているものとしては、健康保険の保険給付や雇用保険の失業給付などがある。

押さえておきたいIT用語

ChatGPT

 ChatGPTとは、利用者がテキスト入力した質問や指示に対しコンピューターが自動で応答する「チャットボット」の一種で、人工知能を専門とする米国の研究団体「OpenAI」が開発したAIチャットサービスだ。従来のチャットボットはあらかじめプログラムされた定型処理しかできなかったが、ChatGPTではインターネット上の大量のテキスト情報を分析することであらゆる要求に対し回答を導き出せるうえ、プログラミングや論文執筆などの創作活動も可能なのが特徴となっている。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「インターネットの登場と同じくらい我々の生活に変革をもたらすだろう」と評している。
 OpenAIのホームページ上で氏名やメールアドレスを登録すれば誰でも利用可能で、ユーザー数は昨年11月のサービス開始から5日で100万人、2カ月で1億人を突破しウェブサービス史上最速を記録した。現在は無料となっているものの、将来的には有料化も検討されている。
 普及に伴い課題も浮かび上がっている。イスラエルのセキュリティー会社ディープインスティンクトは、ChatGPTにコンピューターウイルスの生成を依頼できたとして「サイバー攻撃に悪用されるおそれがある」と指摘している。また、インターネット上の「ニセ情報」をもとに回答を作り出してしまうリスクもある。

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