毎月更新!時事コラム

第1765号(3月5号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「『1億円の壁』の解消に向けて一定の結果を出した」(2月22日、岸田文雄首相)――衆院予算委員会で。金融所得の多い富裕層ほど実質的な税負担率が低くなる「1億円の壁」の是正に向けた施策を2023年度税制改正で盛り込んだとして、「格差解消へ一定の結果を出した」との見解を示した。改正の内容は、実際の納税額が「合計所得から3.3億円を控除した額×22.5%」を下回る人に対し差額分を追加で課税するというもの。ただ、実際に税負担が増えるのは全国で200~300人程度と見られている。所得税・住民税率は最大55%に達する一方で例外的に金融所得の税率は一律20%に抑えられているため、金融所得の多い富裕層は税負担率が小さくなる傾向があり、概ね所得1億円を超えると負担率が減少することから「1億円の壁」と呼ばれている。

◆「マイナカード普及率に応じて地方交付税額を変えるのは合理的だ」(2月21日、松本剛明総務相)――衆院総務委員会で。マイナンバーカードの普及率が高い自治体に地方交付税を割り増し配分する政府の方針について、「合理的な施策だ」との見解を示した。政府は地方交付税のうち「マイナンバー利活用特別分」についてカード普及率が高い上位3分の1の自治体に優先的に割り当てるとしている。野党議員からは「地方交付税を目的に、自治体が任意であるはずのカードを住民に強要することにつながりかねない」「普及率で金額を変えるのは強権的だ」など批判の声が上がったが、松本氏は「全く強引とは思わない。交付率が高い自治体ほど発行手続きなどにかかる財政需要が大きくなるため必要な施策だ」と主張した。

◆「税収の安定化で財政再建への道筋がついた」(2月6日、京都市の門川大作市長)――2023年度当初予算案の説明会で。市が自由に使える一般財源の収支均衡を22年ぶりに達成したと発表し、「京都市は破たんしない。財政難を乗り越えるための道筋がついた」と説明した。京都市は慢性的な財政赤字に陥っており、21年には5年間で2800億円もの財源不足に陥るとの試算とともに「財政が破たんしかねない」と発表していた。公共交通機関の運賃を割り引く「敬老乗車証」の自己負担金の引き上げやマンション誘致による固定資産税の増加などで歳入を増やしたほか、経費削減にも取り組んだという。

気になるニュースのキーワード

事業成長担保権

 事業成長担保権とは、融資を受ける際に会社の事業そのものを担保にできるようになる新たな権利だ。金融庁は「今国会で法案を提出し、3年以内の導入を目指す」としている。
 事業成長担保権により、企業は事業から生じる将来的なキャッシュフローをノウハウや技術力といった無形資産から算出し、見合った額の融資を受けられるようになる。担保権の設定は金融機関との信託契約によって行う。設定した内容は商業登記簿に登記するため、設定に至った原因や事業成長担保権者の名称については誰でも閲覧可能となる。債務不履行時には、裁判所に選任された管財人が第三者に対する事業の承継や個別資産の売却などにより担保権を実行する。
 金融庁は事業成長担保権を「貸し手と借り手が同じ方向を向く担保権」と表現する。事業から生じる将来的なキャッシュフローを担保とすることから、借り手である中小企業は担保価値が下がらないような経営努力が求められ、一方の貸し手である金融機関も継続的な支援をする必要に迫られるためだ。
 現行の担保制度では、民法上の抵当権や質権に基づき、原則として現預金や土地、建物などの有形資産しか担保にできない。金融庁は、有形資産を前提とした従来の仕組みが中小企業金融における「経営者保証」の過剰な設定を助長していたとして、改善策を模索してきた。

押さえておきたいIT用語

GameFi(ゲームファイ・ゲーミファイ)

 GameFiとは、ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた用語で、プレイを通じて仮想通貨やNFTといった「暗号資産」を稼げるオンラインゲーム全般を指す。従来はGameFiの収入に対する税務上のルールは明確になっていなかったが、月に数百万円~数千万円を稼ぐ人も出てきたなか、今年1月に国税庁は初めて課税対象となるケースの具体例を公表した。
 代表的なゲームタイトルとしては、GPSに連動させたスマートフォンを持って移動した距離に応じ暗号資産を受け取れる「STEPN(ステップン)」や、スポーツ選手のトレーディングカードを用いたシミュレーションゲームで大会の上位に入ると暗号資産が配られる「Sorare(ソラーレ)」などがある。
 GameFiで暗号資産を稼ぐ方法としては、①与えられた課題のクリアや大会でのランキング入賞によるプレイ報酬、②ゲーム内で使えるアイテム(NFT)の転売による利ざや、③NFTを第三者に貸し出すことによるレンタル料――などが挙げられる。
 国税庁の公表により、GameFiの収益に対する課税ルールが明確化された。主なルールとして、①NFTの売買差益が生じたら譲渡所得か雑所得、②臨時・偶発的に50万円以上の価値があるNFTを得たら一時所得、③NFTの購入時に暗号資産の含み益が20万円以上あると雑所得にあたる。

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