毎月更新!時事コラム

第1770号(4月25号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「どうして消費税の増税案が出ないのか疑問」(4月4日、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事)――記者会見で。政府の掲げる「異次元の少子化対策」の財源案について、「消費税の話が出てこないのは疑問だ」との見解を述べた。政府が3月末にとりまとめた少子化対策の〝たたき台〟では、①出産育児一時金の50万円への引き上げ、②妊娠から出産、子育てに至る一貫した伴走支援、③10万円相当の出産・子育て応援交付金の新設―などの施策が盛り込まれた一方で、必要となる財源については明記されていない。岸田文雄首相は社会保険料の引き上げなどを念頭に「こども家庭庁が発足する4月以降に検討を重ねる」と述べるにとどめている。櫻田氏は条文で「少子化に対処するための施策に充てる」とされている消費増税が議論の俎上にのらないのは「不自然だ」と指摘し、「国民の反感を買いやすく鬼門と思われているのかもしれないが、少子化財源は持続可能性のある消費税が適切ではないか」と主張した。

◆「交通税導入の是非は県民投票に付すことも考えている」(4月11日、滋賀県の三日月大造知事)――記者会見で。議会で賛否が分かれている「交通税」の導入の是非について、「将来的には県民投票に付す可能性はゼロではない」と見通した。交通税は三日月氏が構想している新税で、少子高齢化による利用率の低下などを背景に賄えなくなってしまった公共交通の維持コストを県民に負担させるもの。県の調査によると、現状のサービス水準を維持するためには少なくとも新たに年間数十億円規模の財源が必要になるという。自治体が新税を導入するには条例を可決したうえで総務大臣の同意を受ける必要がある。住民投票は必須ではないが、三日月氏は「提案があれば真摯に受け止めるつもりだ」としている。

◆「社会保険料の引き上げは賃上げに水を差す」(4月13日、連合の芳野友子会長)――記者会見で。政府が「異次元の少子化対策」の財源として社会保険料を引き上げる案を検討していることについて、「企業の賃上げ努力に水を差す」と批判した。社会保険料は企業と従業員が折半して負担している。芳野氏は「取りやすいところから取るという発想なのだろうが、まずは賃上げを実現することに注力すべきではないか」と主張した。

気になるニュースのキーワード

空き家税

 空き家税とは、空き家や別荘など普段人が住んでいない住宅に課税する京都市独自の税制のこと。正式名称は「非居住住宅利活用促進税」。市は2026年以降に施行する計画だ。
 課税対象となるのは、市街化区域内にある固定資産税評価額が20万円以上(条例施行後5年間は100万円以上)の戸建て住宅やマンションで、人が住んでいない物件だ。京町屋や歴史的建造物、入院・海外赴任などやむを得ない事情で空き家となっている住宅などは減免対象となる。市によると課税対象の物件は市内全域で1.5万件に上る見込み。
 課税対象の物件の保有者は、原則として家屋の固定資産税評価額の0.7%を新たに負担しなければならない。土地の評価額などに応じて税率の加算もある。100m2の住宅をもとにした市の試算では、市中心部の築5年の高層マンション最上階であれば年約94万円、ニュータウンにある築40年の戸建て住宅なら年約3万円が新たに課される。
 門川大作市長は、「子育て世帯の市外流出を防ぐことが目的」という。景観保全のため建物の高さに規制を設けている同市では住宅の供給不足が課題となっているため、空き家の所有者に対する税負担を重くすることで物件の売却や賃貸を促す狙いだ。

押さえておきたいIT用語

デジタル給与払い

 デジタル給与払いとは、給与の支払いをデジタルマネーで行える制度のこと。一般的に行われている銀行・証券口座への振り込みにかわり、スマートフォン決済アプリのアカウントに直接デジタルマネーを送金できる。賃金の支払い方法を定めている労働基準法の施行規則改正により4月から解禁された。
 もっとも法律上は解禁となったものの、デジタル給与の払込み先となる「指定資金移動業者」の審査はこれからだ。NTTドコモの「d払い」やKDDIの「auPay」、楽天Edyの「楽天キャッシュ」、PayPayなどが名乗りを上げており、厚生労働省によると夏以降に正式に条件をクリアした指定資金移動業者が決まる見込みだ。
 デジタル給与払い導入による従業員側のメリットとしては、決済アプリへのチャージの手間を省略できる点が挙げられる。また外国人労働者など銀行口座を持たない人が給与を受け取りやすくなるという利点もある。
 一方、会社にとってデジタル給与払いを活用するメリットは乏しい。決済アプリの口座残高は上限100万円と定められているため、口座に収まらなかった給与については銀行口座への振り込みを併用しなければならないためだ。政府はデジタル給与払いの利用により「銀行手数料の削減効果がある」とうたっているが、実際には手数料を削減できないうえ新たな手間が加わることにもなりかねない。

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