毎月更新!時事コラム

第1772号(5月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「少子化財源の確保に向け、増税も検討すべき」(4月26日、日本経済団体連合会)――政策提言書で。少子化対策の財源として政府が予定している社会保険料の引き上げ案について、「現役世代に負担が偏る」と指摘したうえで、負担バランスを公平化するためには「様々な税財源の組み合わせによる新たな負担を検討すべき」と提言した。具体的な案として消費増税と所得増税の2つを挙げている。消費増税のメリットについては、「所得税・法人税と異なり景気変動の影響を受けにくい」ため安定性の高い財源になるという。また所得増税の利点としては、「累進課税が適用されるため、所得によらず保険料率が単一の社会保険料よりは低所得者の負担率を抑えることができる」としている。なお、法人増税については言及していない。

◆「消費増税で財政バランスが保たれている」(4月26日、日本銀行の植田和男総裁)――衆議院の財務金融委員会で。第2次安倍政権が導入した経済政策「アベノミクス」によって行われた大規模な金融緩和が「財政に悪影響を及ぼしているのではないか」とする野党議員の質問に対し、「必ずしも財政にツケが残っているとは考えていない」との見解を示した。アベノミクスの成果として「一定の経済成長が実現している」としたうえで、「財政バランスは消費増税などによって保たれている」という。

◆「退職金の優遇税制を見直す」(4月12日、岸田文雄首相)――新しい資本主義実現会議で。成長戦略の柱と位置付けている「雇用の流動化」を促すため、「働き手の離転職を踏みとどまらせてしまう現行の退職金税制を見直す」との方針を打ち出した。退職金には、①1つの会社に長く勤めるほど控除額が大きくなる「退職所得控除」、②退職所得控除後の残額からさらに半分を非課税にできる「2分の1課税」、③他の所得との合算が不要で低い税率を適用できる「分離課税」――と大きく分けて3つの税制上の優遇措置がある。このうち岸田首相は「①退職所得控除」について「年功序列や終身雇用を前提とした日本型雇用慣行の1つになっており、労働移動の円滑化を阻害している」と見直しの必要性を指摘した。実現会議の委員からは退職所得控除の引き下げや優遇措置そのものの修正を促す案が出ている。

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人材派遣型企業版ふるさと納税

 人材派遣型企業版ふるさと納税とは、企業が自治体に社員を派遣し、人件費を寄付として負担する制度のこと。法人向けのふるさと納税制度のひとつで、2020年10月に導入された。内閣府によると「自治体側には財政負担のない人材確保や民間ノウハウの吸収といった利点があり、一方の企業側には社員の育成や税の軽減などのメリットがある」という。人材の豊富な大手企業を中心に活用が進んでおり、今年4月1日時点では30社が83自治体に累計102人を派遣している。
 企業の節税メリットは大きい。自治体への寄付による通常の損金算入(寄付額の3割)に加え、法人税や法人住民税、法人事業税といった「法人関係税」が最大6割控除されるためだ。全体として寄付額の最大9割もの節税効果が得られる。
 もっとも同制度にはさまざまな課題もある。利用しているのは第一生命保険や南海電気鉄道、九州電力など多くの人材を抱える大手企業に限られているのが現状だ。また、寄付をした企業に対して自治体が経済的見返りをすることは禁じられているものの、野党からは「企業と自治体の癒着に繋がりかねない」といった批判もある。本社所在地の自治体には寄付できないため、大手企業の多く立地する自治体は税収減となってしまうおそれもある。

押さえておきたいIT用語

海賊版サイト

 海賊版サイトとは、著作者や出版社など権利者の許可を得ずにアニメや映画、音楽といったコンテンツを不正に公開しているウェブサイトのこと。コンテンツを無料公開して閲覧者を集め、広告収入を得る仕組みが主流となっている。本来であれば権利者に入るはずの多額の収益が生まれず社会問題化している。
 被害額は急速に増えている。海賊版サイトの情報収集を行うコンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、国内権利者の年間被害額は2019年時点で約4300億円だったものの、22年にはおよそ2兆2020億円とわずか3年間で5倍に膨らんだ。深刻化の原因としてCODAは、▽コロナ禍の巣ごもり需要によるコンテンツ消費量の増加▽ダウンロード不要で手軽に動画や音楽を視聴できる「ストリーミング再生」の普及▽ベトナムやブラジルといった新興国の運営者の増加などを挙げている。
 海賊版サイトの運営は著作権法違反にあたるが摘発は難しい。接続元情報の開示請求が困難な海外サーバーが使われていることが多いためだ。
 運営者のみならず利用者にも罰則がある。2021年の著作権法改正により、海賊版サイトのコンテンツを「何度も継続的にダウンロード(保存)」していると、2年以下の懲役や200万円以下の罰金が科されるようになった。もっとも、ダウンロードせずに視聴するだけであれば違法行為にはあたらない。

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