毎月更新!時事コラム

第1776号(6月25号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「廃業していく声優やアニメーターが増えていくと裾野がなくなり、クオリティが下がる」(5月18日、タレントのラ・サール石井さん)――インボイス制度反対集会で。今年10月にスタート予定の消費税インボイス制度を廃止するためのトークイベントが東京・新宿区で開かれ、ゲストスピーカーの石井さんがインボイス導入後にエンタメ業界に与える影響への危惧を語った。石井さんは「消費税を10%にするとき、公明党が票にならないと思って軽減税率をつくって3年たった。国は全部10%にしたときを考えて、損した分を取り戻そうとしているのではないか。しかも複雑にしてだれもわからないようにして、そっとやろうとしている」とも言及した。

◆「解散前の『増税隠し』はひきょう」(6月6日、立憲民主党の岡田克也幹事長)――記者会見で。政府が「異次元の少子化対策」にかかる財源の提示を先送りしたことについて、「メリットを並べ立てておきながら財源案を議論しないのは姑息でひきょう」と批判した。政府は出産一時金の引き上げや出産・子育て応援交付金の新設といった子ども政策の実行に向け「将来的な予算倍増を目指す」としている。具体的な財源については「骨太の方針」を公表する6月末までに取りまとめるとしていたが、このほど年末まで先送りすることを決めた。岡田氏は与党内で出ている衆議院解散案に言及し、「このまま解散となれば『増税隠し解散』と非難されても仕方ない」ととがめ立てた。

◆「退職所得課税制度の見直しを行う」(6月2日、経済財政諮問会議)――記者会見で。2022年度のふるさと納税流出額が約1.6億円と全国の町村で最大になったと発表し、「町の小中学校の給食費とほぼ同額の赤字だ。制度設計の甘い制度で本当に腹立たしい」と苦言を呈した。ふるさと納税制度では、寄付先の自治体の税収が増える一方で、寄付者が暮らす自治体は寄付金控除により税収減となる。ふるさと納税で赤字になった市町村には赤字額の75%を地方交付税で補てんする救済措置があるものの、長泉町は不交付団体であり支援が受けられない状況だ。池田氏は「制度を批判し突っ張ってきたが、今後は返礼品開発をやらざるを得ない」と述べた。

気になるニュースのキーワード

信託型ストックオプション

 信託型ストックオプション(信託型SO)とは、あらかじめ決めた価格で株式を購入できる「ストックオプション(SO)」の交付に当たって信託会社を利用するスキームのこと。発行したSOを信託会社に預けておき、成果や貢献度に応じて役員や従業員らに交付する仕組みとなっている。国税庁はこのほど、信託型SOによって役員や従業員らが得た利益は給与課税にあたるとの見解を示した。
 信託型SOのメリットは、信託会社を介すことで企業価値が低い成長初期の段階のSOをプールしておける点にある。通常のSOでは企業の成長段階に応じてSOの価値が変わるため、企業が成熟してから入社した役員や従業員らは最初から価値の上がったSOを受け取ることになり利益を得づらい。一方の信託型SOは企業価値が低い時期のSOを受け取れるため、役員や従業員らの入社時期にかかわらず同等の利益を得られるようになっている。国税庁によると約800社が利用している。
 信託型SOの税制を巡っては、これまで税率20%の金融所得と捉えていた企業が少なからず存在したが、国税庁は5月29日にスタートアップ関連団体が開いた説明会で「給与課税にあたる」とし最大税率55%の累進課税が適用されると説明した。もっとも国税庁は「従来から見解が変わったわけではない」としている。

押さえておきたいIT用語

サイバーセキュリティお助け隊サービス

 サイバーセキュリティお助け隊サービスとは、サイバー攻撃対策に必要とされる仕組みをパッケージ化した民間サービスで、経済産業省の「情報処理推進機構(IPA)」が審査・登録したものを指す。政府は近年多発しているサイバー攻撃について「セキュリティが手薄になりがちな中小事業者が取引先の大企業のシステムに侵入するための足掛かりとして狙われている」と分析しており、中小企業のセキュリティ向上を目的に2021年からお助け隊サービスの運用を始めた。
 お助け隊サービスでは、①PCやネットワークの異常の監視、②相談窓口による対応、③トラブル発生時のIT事業者による駆けつけ対応、④簡易的なサイバー保険による各種コストの補償――といったサイバーセキュリティ関連のサポートを受けられる。利用料金はサービス内容や端末数などによって変動し、1端末当たり月額千円以下で導入できるものもある。お助け隊サービスのリストはIPAの専用ホームページから確認可能だ。
 なお、お助け隊サービスにかかる費用を援助するIT導入補助金「セキュリティ対策推進枠」も2022年8月からスタートした。同枠ではサービス利用料の2分の1まで最大100万円の補助を受けられる。直近の申請締め切りは7月10日だ。
 中小企業でサイバー攻撃の被害は多発している。帝国データバンクによると「1年以内に攻撃を受けた」と回答した事業者は24.2%に上る。

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