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最近の税に関するコトバ集
◆「近年の法人実効税率の引き下げが必ずしも前向きな投資につながらなかったことを踏まえて、賃上げ促進などの施策を盛り込んだ」(12月15日、鈴木俊一財務大臣)――記者会見で。令和6年度税制改正大綱では、賃上げ促進税制やイノベーションボックス税制の創設など、対象や目的を絞った企業向けの減税施策が盛り込まれた。この大綱に法人税率の引き上げも視野に入れた検討が必要と明記された件について、鈴木大臣は「全体のメリハリづけという観点から、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し減税措置の実行性を高める観点からも、税収中立の観点からも、今後法人税率の引き上げも視野に入れた検討が必要である」とコメントした。
◆「与党の税調の文書にそれ(トリガー条項の凍結解除)を前に進めるような記述を入れることは国民の理解を得ることが困難」(12月19日、公明党山口那津男代表)――記者会見で。自民、公明、国民民主の3党はトリガー条項の凍結解除について協議を行っていたが、国民民主が内閣不信任案に賛成したことを踏まえて、山口代表は「真摯な取り組みの前提が崩れてしまった」と3党協議について消極的な姿勢を示した。トリガー条項とは、ガソリン価格が一定期間高止まりしたときに、ガソリンにかかる税率を引き下げる規定のこと。現在の制度体制について、山口代表は「激減緩和策が実行されて価格の変動に対しても柔軟に対応できる取り組みが実際になされているので、そこは冷静に考えるべき」とコメントした。なお、令和6年度税制改正大綱へのトリガー条項の凍結解除に関する記載は見送られた。
◆「税金も払わないお金を政治家が自由に使っていた。国民が大暴動を起こしてもおかしくないくらいの大問題」(12月24日、橋下徹氏)――テレビ番組内で。東京地検特捜部が安倍派と二階派の事務所に強制捜査に入った自民党の裏金問題について、橋下氏は「多くの会社員が年末調整で自分がどれだけ税金を払っているのかはっきり見えるなか、税金も払わないお金を政治家が裏金にして自由に使っていた。インボイスには基本的に賛成だが、このような状況の中で膨大な事務を国民に負わせる。なのに政治家たちはこんな状況」と憤りをあらわにした。

気になるニュースのキーワード
金融緩和
「金融緩和」とは、中央銀行(日本では日本銀行)による通貨制度を安定させるための政策のひとつで、市場の通貨量を増やすことで経済の活性化を図ること。主に、サービスや商品があり余って物価が下がっているデフレーション時や、経済活動が活発でない不景気の時に有効で、方法としては、金利の引き下げや通貨の発行などがある。金利を下げることで、ローンや借金で資金調達がしやすくなり、起業や投資、消費へとお金が循環する好景気への流れを作ることを狙う。金融緩和の反対で、インフレーションや好景気の時に有効な政策を金融引き締めという。
現在の日本はバブル崩壊後のデフレーションが長く続き、経済は停滞している。第二次安倍政権の経済対策である「アベノミクス」では、2%のインフレーションになるまで無制限で大規模な金融緩和に踏み切った。だが、国債で通貨流通量を増やしマイナス金利導入してもなお、デフレーションは解消されなかった。
そして近年、世界的なコロナウイルス蔓延や戦争により物価高騰に傾いている。インフレーション傾向で賃金の上昇が追いつかず好景気には至らないものの、いつ日本の金融緩和が解消されるのか世界が注目している。2023年12月7日、日本銀行の植田和男総裁の金融緩和解消に向けた積極的発言とも取れる発言で、一時円高が更新されたが19日には引き続き金融緩和政策を維持すると発表した。

押さえておきたいIT用語
半導体
半導体とは、導体と絶縁体の中間にある物質のこと。電気を通す物質と電気を通さない物質の間で、電気量の調節を行う。導体の代表は金属、絶縁体の代表はシリコンで、現在の半導体のほとんどがシリコンに電気的な性質を帯びた不純物等を添加して作られる。半導体は電流を制御し、流れを一方通行にしたり、オン・オフを切り替えたりでき、情報の記憶・数値演算などの情報処理機能が電子機器の頭脳として活用されている。たとえば、スマートフォン、パソコン、車、ATMに至るまで生活に欠かせないほぼ全ての電気機器へ組み込まれているのが現状だ。
しかし今、半導体不足が世界的に深刻な問題となっている。コロナ感染症の蔓延、ウクライナ危機での物資の滞り、生産力の偏りが原因とされる。半導体といえば、シリコンを使ったメーカーが集まるシリコンバレーが有名だが、実際には台湾、韓国、中国、日本などのアジアで7割以上の生産量をシェアしている。日本の半導体産業は、1990年後半以降の長期不況で国内投資が十分できず、台湾や韓国に抜かれたが、再び日本の供給力が期待されている。デジタル社会の中で半導体が国際競争の要となり、政府は昨年末に次世代半導体などの開発へ1.3兆円の投資を決めた。与党税制改正大綱からも半導体事業を対象に法人税が優遇される「戦略分野国内生産促進税制」の新設が見込まれ、国際的需要での経済活性化を目指す。
